合同会社の設立方法

こんにちは、税理士法人エナリです。今回は、合同会社の設立方法について解説していきます。

合同会社は2006年に新しく会社法にて追加された会社形態なので、あまり馴染みがない方もいるかもしれません。しかしながら、アマゾンジャパン合同会社やアップルジャパン合同会社などは実は会社形態は合同会社なのです。

会社設立費用が株式会社と比べて安く抑えられたり、設立後も諸手続きが簡便であったりと、当初から株式公開をしない考えがある場合は、選択されやすくなってきているイメージがあります。もちろん株式会社への移行も可能です。

それでは合同会社の設立方法をみていきましょう。

1.基本事項の決定

はじめに、基本的な設立項目を決定していきましょう。

・商号(会社名)

商号とは会社の名前のことです。せっかく設立する法人なので、会社名は既存の会社と被らないようにすることがいいですよね。国税庁の法人番号公表サイトにて会社名を検索すると、既に設立している法人名等を確認することが出来ます。

法人名で、使用できるのは、漢字やひらがな、ローマ字のほか、アラビア数字や一部の符号となります。

参考:国税庁法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)

・事業目的

どのようなビジネスを行うのか決めていきます。複数の事業目的を書くのが一般的で、多い企業になると30個以上の事業目的を書いているケースもあります。原則、事業目的として定めた事業以外の事業をやってはいけないため、慎重に決定しましょう。あとから事業目的を変更・追加することはできますが、その分コストはかかります。無駄なコストをかけないためにも、将来行う可能性のある事業も見据えて設定しておく必要があります。しかしながら、あれもこれもと事業を詰め込むと、外部からすると「この会社は何の会社なのでしょう?」と信用度に影響の出るケースもありますので、しっかり考えていきましょう。

・本店所在地

会社の住所のことです。定款作成や登記申請の際に記入が必要となります。表記方法に決まりはないため、1丁目2番地と書いても、1-2と書いても問題はありませんが、正式な書類ですのでできる限り正式な表記方法での記載をした方が良いでしょう。税務調査が実施されるのもこちらの本店が多いですね。もちろん別の事業所で行なうことも可能ではありますが、管轄の関係もありますので、こちらも慎重に考えましょう。

・資本金の額

資本金に関しては、1円から会社設立が可能です(業種によっては、許認可の関係で一定以上の資本金でないと許認可申請が出来ない場合がありますので、注意が必要です)。資本金は会社が信用できるかどうかの指標や、会社の規模を把握するものとして取引先や金融機関に見られることがありますので、会社規模帯に合った金額にしていきましょう。特に基準はありませんが、100万円以上にすることが多いようですね。総額いくらなのか、誰がいくらずつ出すのか決定し、出資した額によって社員構成も決めていきます。

・社員構成

まず、出資した人(法人も可能)が当該法人の経営権をもつことになります。その中から誰がより高い経営権をもっていくかを決めていきます。それらが業務執行社員となり、その中の代表が代表社員となります。代表社員とは、株式会社でいう代表取締役と同じ役割の者です。代表社員は1人じゃなければいけないという決まりはなく、業務執行社員すべてが代表社員ということも可能ですが、外部の人間が混乱してしまうため、通常は1人だけ代表社員にします。

業務執行社員となる方には、競業禁止を守る義務があります。業務執行社員であるという立場を利用し、他の社員の同意を得ることもなく、同じ業種で営業してはいけません。加えると、同じ業界の他の会社役員にもなることができません

・事業年度

決算を何月にするかを決定します。合同会社は個人事業主と異なり、事業年度を自由に決められます。また、決算を何月にするかによって設立初年度の期間が変わってきます。

一般的には、繁忙期に決算月を設定しないことをおススメしています。理由の一つとしては、決算期末の予測がしづらく、節税や各種対策をとりづらい(動きづらい)ことがあげられます。どちらかというと閑散期に決算月を設定する方が、翌年の事業計画なども立てやすいと考えられますね。

2.印鑑の作成

会社の設立手続きには会社の印鑑が必要となります。印鑑は登記申請書と一緒に法務局に届け出ます。会社印は、一般的に「代表印(実印)」「銀行印」「角印(請求書等に使用)」の3本セットで作成します。法務局に届け出るのが代表印で、銀行印は取引銀行に届ける印鑑です。銀行印は代表印と併用することも可能ですが、紛失・盗難などのリスクがあるため、分けて使われることが一般的です。角印は会社名が掘られた四角い印鑑で、社内文書や契約書、領収書などに捺印するもので認印としても利用します。

会社印は、インターネット通販などでも注文することができ、3本セット1万円以内で作ることも可能です。

3.定款作成

定款とは会社組織を成立させるための規約をまとめた書類のことをいいます。この定款を根拠に合同会社は設立されます。株式会社と比べると、合同会社の定款では株主構成や機関設計、株式の譲渡制限などに関しては書かなくていいので比較的簡単に作成することができます。

絶対的記載事項

  • 商号
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 資本金の額(出資するものの内容とその価額、評価基準)
  • 出資を行う人の氏名等
  • 社員の責任

合同会社は有限責任社員だけで構成されていますが、定款にはそのことを必ず記載しましょう。

相対的記載事項

  • 業務を実際に行う社員(執行社員)の定め
  • 代表社員の定め(社員が複数の場合)
  • 任意退社(退社する際には、どのくらい前までに退社予告をしなければならないなどの取り決めを記しておきましょう。
  • 持分の相続(社員が亡くなった際、払い戻しにより持分を回収するなど)
  • 解散について(特定の条件を満たした際、解散するという定め)
  • 会社の存続期間(期間を区切る場合)

任意的記載事項

  • 事業年度
  • 公告方法

通常、株式会社であれば決算公告をする必要があります。合同会社の場合、決算公告をすることは義務付けられていませんが、合併する際や組織変更する際には公告しなければなりません。その公告方法を定款に記載しておかなければなりません。方法は官報公告、時事に関する日刊新聞紙公告、電子公告の3つの中から選ぶことができます。

  • 利益配当(利益が出た場合の配当方法)
  • 損益の分配と分配の方法

合同会社では、損益の分配について自由に定めることが可能です。分配の割合を固定したくない場合は「各社員への利益の配当に関する事項は、総社員の同意により定める。」と記載することもできます。

  • 残余財産の分配(解散時に残った会社財産をどういう割合で分けるか)

これらで定款の作成が終了です。株式会社であると、この定款を公証人役場にて定款認証が必要になります。合同会社の場合は、こちらが不要です。

定款の作成については、電子定款として作成していきましょう。定款に電子署名を添付し、CD-Rに保存が必要になります。紙作成にて、登記もできますがその際に収入印紙(4万円)を貼る必要があります。

4.資本金の払込

設立登記を行うためには、資本金が確かに払い込まれたことを証明する書類(払込証明書)が必要です。この証明書は銀行が発行するものではなく、自分で作成します。資本金の払込み先は、まだ会社設立前で合同会社名義の口座は作成できないので、社員のうち誰かの口座を使えば大丈夫です。通常でいくと、代表社員の口座を使います。その口座にすべての資本金を払込み、そのあと払込証明書を作成します。払込証明書は、A4の紙に払込証明書と書き「当会社の設立により、発行する株式につき、次のとおり発行価額全額の払込みがあったことを証明します。」と記載します。さらに、資本金の総額や日付、商号、代表社員の名前を記載して押印します。資本金の払込みは、定款が認証された日以降という決まりなのでご注意ください。

5.登記に必要な書類の作成

いよいよ法務局へ持ち込む書類をまとめていきます。下記記載の登記申請書などは法務局よりサンプルが掲載されていますので、是非ご参考ください。

参考:法務局サンプル書類(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001249561.pdf)

定款(電子定款)2部

会社保存用と法務局提出用の2部用意しましょう。3.定款作成で詳しく説明しています。

印鑑届出書

合同会社の実印となる印鑑に効力を持たせるためには、印鑑を届け出る必要があります。2,印鑑の作成を参考にしてください。

社員の印鑑登録証明書

合同会社では、資本金を出す出資者のことを「社員」と呼びます。そのため代表も、株式会社のような代表取締役ではなく「代表社員」という名前になっています。出資する社員全員の実印の印鑑登録証明書を、市区町村の役場で取得しておきましょう。

払込証明書

4,資本金の払込を参考にしてください。

定款に本店所在地が記載されていない場合、本店所在地決定書が必要になります。

代表社員就任承諾書

当該法人の代表社員として選任されたことを承諾する承諾書を作成しましょう。

登記用紙と同一の用紙

定款や決定した事項をそのまま書き写すだけですが、重要な書類なのでミスは許されません。「OCR用紙」という専用の用紙に記入します。CD-Rやフロッピーディスクで提出することもできますので、その場合は法務局のページを参考に提出しましょう。

収入印紙

収入印紙を法務局で購入しましょう。金額は資本金の0.7%になりますが、資本金の額が857万円1,428円未満(資本金の1000分の7が60,000円に満たない)の場合は、一律60,000円になります。

合同会社設立登記申請書

合同会社設立登記申請書は、登記官が書類を調査しやすいように、形式と記載内容が法律で定められています。記載内容は「商号」「本店」「登記の事由」「登記すべき事項」「課税標準金額(資本金)」「登録免許税(収入印紙の金額)」「納付書類」「日付」「申請人の詳細」などです。

資本金の額の計上に関する証明書

会社が払込を受けた金銭・現物出資財産から、会社が負担するべき設立にかかった費用等を引き、登記簿に記載される「会社の資本金」を計算する書類です。

6.管轄の法務局へ

登記申請は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局で手続きを行います。登録免許税として6万円の収入印紙を貼って提出します。法務局でも収入印紙は販売しているので、一度法務局で書類をチェックしてもらってから提出する直前に貼るとよいでしょう。登記が完了しても法務局からの完了連絡はありません。設立日は申請書を提出した日となります。法務局にて登記完了予定日を教えて頂けるので、その以降に登記が出来ているか確認をしにいきます。

登記完了後は、履歴事項全部証明書の取得と、法人の印鑑証明書を取得しましょう。

まとめ

いかがでしょうか。文面で全部を一から自身で作成していくとなると、なかなか骨の折れる手間となりますね。最近では、必要項目を入力していくだけで、簡単に作成してくれるサイトなどもありますので、是非活用していきたいものです。

最後におすすめの法人設立サイトを掲載しておきます。法人設立後の会計ソフトも一緒に検討ができるのでおすすめです!

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また、法人設立にあわせて税理士をお探しの方は是非当事務所にご相談ください。法人設立前からしっかりサポートをさせて頂きます。

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